省電力プロセッサCeleron N3050を試してみた

新しくなったCeleronプロセッサはどの程度の実力を備えているか?

2015-12-10

お久しぶりです、職人5号です。
今回はお手頃価格で手に入るマザーボードに搭載されている、省電力プロセッサ「Celeron N3050」ではどこまでの事が出来るのか、検証を通して明らかにしていきたいと思います。

ワットパフォーマンスの高さからファンレスの省電力プロセッサとして人気だったBay Trail(ベイトレール)ですが、製造プロセスルールの進化に伴い後継モデルとしてBraswell(ブラスウェル)が登場してきました。もとよりパワー重視の製品ではないので快適な3Dゲームプレイなどといった用途には不向きではありますが、日常的なカジュアルユースやセカンドマシンとしてはどの程度の実力を備えているのでしょうか。
Bay Trailについては、Celeron N2807を搭載したECS LIVAについて以前職人3号がレビューを行いましたが、今回はCeleron N3050を搭載したASRock N3050B-ITXを使用してWindows 10環境でのBraswellの使用感を見て行きたいと思います。

ECS LIVAのレビューはこちら。

まずは、ECS LIVAに搭載されていたCeleron N2807とASRock N3050B-ITXに搭載されているCeleron N3050との仕様を比較してみましょう。

CPU Celeron N3050 Celeron N2807
コードネーム Braswell Bay Trail
製造プロセス 14nm 22nm
コア数 2 2
スレッド数 2 2
ベースクロック 1.60GHz 1.58GHz
バーストクロック 2.16GHz 2.16GHz
L2キャッシュ 2MB 1MB
GPUコア 第8世代 Intel HD Graphics 第7世代 Intel HD Graphics
演算ユニット 12 4
ベースクロック 320MHz 313MHz
バーストクロック 600MHz 750MHz
TDP 6W 4.3W
SDP 4W 2.5W

プロセスルールは1段進化していますが、スペックシート上ではCPUコア・スレッド数や動作クロックにはほぼ違いがなく、CPU部分で言えばL2キャッシュが1MBから2MBになった事くらいの違いしか見られません。一方、GPU部分ではGPUコアが1世代進化するとともに演算ユニット数が4から12と3倍になるなど、大幅にGPU機能が強化されています。なお、意外にもTDPはCeleron N3050の方が高くなっていますが、これはCeleron N2807が低消費電力モデルのためであり、N3050B-ITXもファンレス設計となっている事からも、発熱については余り気にすることは無さそうです。
それでは、実際に検証機「bz-N3050I テストモデル」を用意し、Celeron N3050の性能を見て行きましょう。

※検証環境の詳細な仕様は文末に記載しております。

1. 実際にWord、Excel、PowerPointで作業をしてみる

Microsoft OfficeのWord、Excel、PowerPointを実際に使って、どこまで快適に動作するのかをテストしてみたいと思います。今回のために「職人1号」に用意してもらったそれぞれのデータを読み込み、動作させてみたところの動画を、外部キャプチャツール「HD PVR Rocket」にてキャプチャしました。 なお、用意したデータは、実際に使うであろう程度の範囲を想定したデータ量で作成してあります。

まずは文書作成のWordから確認していきましょう。
夏目漱石の「吾輩は猫である」の本文をコピーし37万文字にしたデータを用意し、文字の置き換え、スクロール、画像のコピーペーストをテストしました。


「Wordを使って、文字の置き換え・スクロール・画像のコピーペーストをテストしてみた」

非常に快適な動作を見せます。文字の置き換えは訂正箇所が500近くありますが、一瞬で終わります。文書のオートスクロールでは、CPU使用率が100%になる事もありますが、動作がカクカクしたり、スクロールが停止してしまうという事はありません。また、後半では画像の挿入を行っていますが、挿入時こそ画像の読み込みに若干時間がかかりましたが、画像を挿入した文書のスクロールには一切影響がありませんでした。文書作成には十分な性能を有していると言えます。

次にExcelのテストを行いました。100万行分のランダムなデータを元にスクロール、合計、表記の切り替え、コピー&ペーストを実行し、最後にこのデータを用いて簡単なピボットテーブルを作成してみました。

「Excelを使って、100万行分のランダムなデータを元にスクロールしてみた」

100万行あっても動作は快適です。エクセルシートのスクロール時こそCPU使用率は100%となりますが、それ以外ではCPU使用率は低い状態を維持したままで、合計やカウントなどの計算式はほぼ一瞬で完了、コピー&ペーストも十分な速さです。ピボットテーブルでの集計や行・列の入れ替え、合計値を平均値に変更などの処理もスムーズに実行出来ました。

最後にPowerPointで作成したスライドを再生してみます。左側に動物のムービー、右側に特殊効果的なものという2つの動画を埋め込み、文字には比較的CPUパワーを消費した回転のアニメーション処理を施しています。


「PowerPointで、作成したスライドを再生してみた」

Word同様に非常に快適な動作をしています。ファイルの読み込み時のみ一時的にCPU使用率が上がりますが、それ以外では概ね50%前後と余裕の動作を見せています。

以上の様に、一般的なOfficeの動作については、十分な処理能力を備えていると言えます。Celeron N3050の処理がテキパキとしていた分、むしろ操作のたどたどしさの方が目立ってしまいました。

2.実際にインターネットをしてみる

Windows 10 に標準で搭載されているブラウザには、新機軸の「Edge」と互換性のために残された「Internet Explorer 11」の2種類があります。それぞれのブラウザで動作に違いがあるのかも含めて、実際の表示操作時のCPU使用率と体感的な速度を見てみましょう。今回も動作画面を外部のキャプチャツール「HD PVR Rocket」にてキャプチャしました。

まずはパソコン工房のホームページでパソコンの注文をしてみます。


「パソコンを注文してみた ~Edge編~」


「パソコンを注文してみた ~Internet Explorer 11編~」

どちらのブラウザも非常に快適に操作できます。ページの読み込み時こそCPU使用率が上がりますが、それ以外ではCPU使用率も低いままで推移しています。

続いてパソコン工房サイト内で雑貨を取り扱う「Nantena」を表示させてみます。このページは、ウィンドウの大きさに合わせてレイアウトが変化するレスポンシブデザインが採用されています。


「Nantenaを表示させてみた ~Edge編~」


「Nantenaを表示させてみた ~Internet Explorer 11編~」

どちらのブラウザとも同じような挙動となっており、ウィンドウの大きさを変更してレイアウトが変化するとCPU使用率が上がり動作がカクカクッとしてしまいます。わずかながら「Edge」の方が「Internet Explorer 11」よりはカクツキが少ないように感じられました。とはいえ、通常ブラウザのウィンドウサイズを頻繁に変更する事はあまりないので大きな問題では無いと思われます。また、ページのスクロールについては、全く問題ありませんでした。

最後に「Nantena」と同じくレスポンシブデザインを採用している「tumblr」を見てみます。


「tumblrを表示させてみた ~Edge編~」


「tumblrを表示させてみた ~Internet Explorer 11編~」

どちらのブラウザとも同じような挙動となっています。表示される動画やアニメーションが多いためかCPU使用率がかなり高くなっており、ページをスクロールすると時折表示が固まってしていました。動画やアニメーションが多用されているページの表示は苦手な様です。

以上の様に、動画やアニメーションが多用されているようなウェブページでは重くなる事もありますが、ブラウザにおける一般的な閲覧についてはほぼ問題が無いと言えるでしょう。また「Edge」と「Internet Explorer 11」との動作上の大きな違いは無いようです。

3. YouTubeで動画の再生をしてみる

YouTubeやニコニコ動画などでのネット動画視聴は既にごく一般的なインターネットの利用方法となっていますので、「Edge」と「Internet Explorer 11」の双方でYouTubeの動画再生を試してみました。Braswell世代では、HEVC/H.265のハードウェア再生支援機能をサポートしているので、快適な動画再生が期待できます。

では、1080p・60fpsのフルHD動画を再生させてみましょう。
上が「Edge」、下が「Internet Explorer 11」で再生した動画のキャプチャ画像です。左上のウィンドウはYouTubeの標準機能である「詳細統計情報」で、コマ落ちなどの情報を得る事が出来ます。

Edge


全体画面

YouTubeの標準機能「詳細統計情報」

CPUの使用率

Internet Explorer 11


全体画面

YouTubeの標準機能「詳細統計情報」

CPUの使用率

両ブラウザとも、CPU使用率は概ね30%前後でコマ落ち無しと、非常に快適に視聴する事ができます。Braswellのハードウェア再生支援機能「インテル クリアビデオHDテクノロジー」が有効に作用している事がうかがわれます。また、Edgeのみでの確認ですが、4時間以上の連続再生でも全く問題ありませんでした。長編映画の連続再生も問題なく楽しむ事が出来そうです。

続いて、ECS LIVAでは動作が重かったChromeでも快適に使えるようになったのかを確認してみましょう。


「EdgeとChromeでYouTubeを見比べてみた。」

Edgeとの比較ですが、Chromeでの動画再生は非常に重く、ガクガクッとした再生となっています。Edgeの滑らかな再生とは一目してその違いが分かります。Celeron N3050とCeleron N2807ではCPUの処理能力には大きな違いが無いためか、Celeron N2807と同様の結果となってしまいました。CPUパワーの小さいPCでは、Microsoft製ブラウザの方が快適に使用できるようです。最新の技術に対応しながら軽快に動作するEdgeは、ローパワーPCにとって優秀なブラウザであると言えます。

4.GPUの性能を測定してみる

先代のBay TrailからGPU機能が大幅に強化されていますが、3Dゲームを遊ぶ事は出来るのか。本格的なゲームは無理だとしても、ちょっとしたゲームを気軽に楽しむ程度の性能があるのかどうか、ベンチマークテストを使用して確認してみましょう。

ベンチマーク 解像度 設定 スコア 評価
ドラゴンクエストX 1280*720 標準品質 2416 やや重い
低品質 2897 やや重い
Dragons Dogma Online 1280*720 標準品質 1338 設定変更を推奨
低品質 1398 設定変更を推奨
Phantasy Star Online2 1280*720 簡易設定3 745 重い
簡易設定2 919 重い
簡易設定1 6797 快適

1280x720の解像度設定でもかなり厳しい結果となっています。Bay Trail世代からGPU機能が大幅に強化されたといっても、最近の新タイトルの3Dゲームを遊ぶのは難しそうです。
とはいえ、Phantasy Star Online 2では簡易設定1まで下げれば「快適」の評価となり、PSO2を遊ぶことができそうです。

5.日常使いには最適

3Dゲームといったマシンパワーを必要とする用途には不向きですが、インターネットやメール、ネット動画視聴や簡単なOffice作業といった、日常的なカジュアルユースには十分な能力を秘めていることが分りました。Bay Trail譲りのワットパフォーマンスの高さは随所に遺憾なく発揮されており、これならセカンドマシンとしてはもちろん、メインマシンとしても十分に使用する事が出来るのではないでしょうか。また、小型でファンレス仕様のため動作音も非常に静かな事からリビングPCとしても魅力的な存在となるのではないでしょうか。何より、消費電力も少なくボード自体も安価と、お財布にやさしい庶民の味方といった感じなのが一番の魅力かも知れませんね。


執筆:パソコン工房 職人5号

※検証環境

省電力コンパクトPC bz-N3050I テストモデル
CPU Celeron N3050 (1.60-2.16GHz/2コア・2スレッド/キャッシュ2MB/TDP6W)
CPUクーラー パッシブヒートシンク
マザーボード ASRock N3050B-ITX
メインメモリ SODIMM DDR3-1600 16GB (8GBx2)
グラフィック機能 第8世代 Intel HD Graphics
ストレージ Kingstone SV300S37A (120GB SSD)
電源 付属90W ACアダプタ
OS Windows 10 Home 64bit
ケース Antec ISK-110 VESA