Miracastを試す

ケーブルレスでテレビやモニタに映像を飛ばす

2015-3-6

パソコン工房ECサイトへのご来訪ありがとうございます。 職人2号です。

最近は10インチ以下のタブレットやスマートフォンが数多く発売され、その多くが機能面でもデスクトップPCやノートPCと遜色ない操作感で利用できるようになったことから、WEBブラウズやメールチェックなどがパソコンではなくタブレットやスマホで行われるようになり、かつLINEに代表されるSNSツールに関してはスマホ/タブレットのほうが操作性に優れているなど、ますますスマホ/タブレットが重宝される傾向になっています。 とはいえ、通勤・通学途中や外出中にちょっとチェックしたりであれば小型軽量なスマホ/タブレットは便利ですが、帰宅して屋内で使用するときまで4~8インチの小さな画面を見るのはいかがなものでしょうか・・・。

と考えてみたところ、やはりそういったニーズがあったのでしょうか。 スマホやタブレットの画面をテレビや液晶モニタへ写す技術は存在します。 パソコンに搭載されている映像出力端子を小型化したmicro HDMIやMini DisplayPortといったポートを利用して有線で接続する方法もあります。ただ、小型の端末にケーブルを接続するのは充電用のmicro USBケーブルだけで十分でしょう。ケーブルなしに無線技術でスマホやタブレットの映像をテレビや液晶モニタへ写す技術が確立されています。この技術・仕組みを「Miracast」と言います。

「Miracast」は「Wi-Fi Alliance」という無線LAN製品の普及促進を目的とした業界団体により、1対1の無線通信手段として策定されたディスプレイ伝送技術で、デバイス側の対応製品もスマホ、タブレットだけでなくゲーム機(Wii UがGame Padの映像転送に使用)にまで範囲が及んでいます。

スマホではGoogleがAndroidバージョン4.2以降でMiracastに標準対応することを発表しており、現行のAndroidスマホ/タブレットのほとんどが対応していることとなります。タブレットでのニーズを考慮してか、MicrosoftもWindows8.1以降でMiracastに対応しています。

映像を飛ばす側だけでなく、映像を受け取り、テレビや液晶モニタへ受け渡すレシーバー側も対応製品が増えてきています。 ただ、色々と情報を集めてみますと規格として確立された技術ではあるものの、機器の組み合わせによっては機能が一部制限されたり、うまく動かなかったりといった例もあるようです。 動く組合せと動かない組合せにはなにか違いがあるのか・・・この辺りがはっきりするとMiracast技術への敷居が下がるのではないかと思われます。

そんな中、国内周辺機器メーカーであるアイ・オー・データ機器よりMiracastアダプタ「ミラプレ(WFD-HDMI)」(以降ミラプレ)をお借りする機会を得ました。そこで、今回はミラプレとiiyama製のスピーカー内蔵液晶モニタGB2488HSU-B1を用意し、HDMI接続することで受け側環境を構築の上で、実際にMiracast技術について試してみたいと思います。

「ミラプレ」の概要

今回お借りしたミラプレですが、ざっとこのようなパッケージとなっています。
付属品としてマニュアルのほか電源供給用のmicro USBケーブルとテレビ/液晶モニタと接続するHDMIケーブルが入っています。

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ミラプレ本体の外観です、本体背面にHDMI端子と電源共有用もmicro USB端子が搭載されています。側面にはモード切り替え用のボタンが配置されています。

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実際に配線をするとこんな感じになります。

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特にスイッチ的なものはなく、HDMIケーブルでミラプレと液晶モニタを接続し、電源供給用のmicro USBケーブルを挿すと電源が入り、しばらく待つとこのような画面が出てきます。

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この画面が表示されることで映像データを受信する準備が完了したことになります。受け側の設置・設定はとても簡単に行えます。 今度は映像を送るデバイス側の準備・設定となるのですが、これについてはデバイスにより設定の仕方も変わってきます。ここでは主要デバイスとなるAndroidスマホ並びにWindows8.1タブレットについて実際に接続を試していきます。また、若干番外編的になるのですが、iPhoneについても触れていきます。

「ミラプレ」+ Android

Googleのスマホ/タブレット向けOS「Android」ではバージョン4.2以降でMiracast対応が謳われています。したがってOSレベルではMiracastがすぐに使えることにはなるのですが、Androidはソースコードが公開されており、自由に改変が出来るようになっているため、メーカーにより「Miracast」という表記がそのまま使用されていたり、別の言葉に置き換えられていたり、はたまた機能そのものを実装していなかったりと様々です。
そのため、今回はメーカーにてMiracast対応を謳ったASUS製Androidタブレット「MEMO Pad 7」をメーカー代理店でありますテックウインド㈱よりお借りして実験をしました。
また2号私用のスマホ「L-05E」がMiracast設定を持っていたため、合わせてこちらも実験に駆り出しました。

MEMO Pad 7での設定

MEMO Pad 7では「設定」→「無線とネットワーク」にある「PlayTo」がMiracast接続を行う設定項目となります。
こちらをタップするとMiracastデバイス(ここではレシーバー)の検索が行われ、結果が返されます。
ミラプレは「WFD-HDMIxx:xx:xx:xx:xx:xx」で検知されますのでこれをタップすることで接続が開始されます。
※固有ID部分はマスクしています

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接続が開始されるとタブレットの画面がそのまま液晶モニタに表示されました。タブレットの縦横に合わせて画面も切り替わります。

2号私用のL-05Eでは「設定」→「その他」にそのままズバリ「Miracast」の項目がありました。 ここから設定を進めていくことで、接続が確立されました。

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Android版の3D Markもちゃんと画面や音が転送されます。 他にもブラウザや動画プレイヤーなどスマホ/タブレット上で実行したアプリが映像/音ともにモニタに転送されますので、友人と動画を一緒に見たり、ゲームをテレビに大写しにしたりと今までとは一味違う楽しみ方が出来るのではないかと思います。

ここまで転送を試して見たわけですが、実は万全であったわけではありません。
しばらく使用していると確立されていた接続が突然終了してしまっていたり、再確立がうまくいかなくなったりといった事象が発生しました。
ミラプレ側のリセットやタブレットの設定リセットなどを行うことで解決出来たり出来なかったりといった状況だったため、メーカーに相談してみましたが、このあたりはAndroid OSの性質からMiracastに関するメーカー/端末ごとの仕様差が大きく、相性問題が避けられない、また、無線通信に通常通信と同じ2.4GHz帯を使用していることからMiracast分で確保した帯域が通常通信に使用されたりといった形で接続が切れてしまったりといったことが起こり、なかなか万全を期すのが難しいようです。
とはいえ、ミラプレでは通信帯として、タブレットなどで一般的に(無意識に)使用する2.4GHz帯の他5GHz帯の周波数での接続もサポートしているため、スマホやタブレットが5GHz通信をサポートしている場合には5GHz帯でMiracast接続を確立するのが相性の回避に繋がる思われます。うまく接続できない場合には、ミラプレのリセットの他、一度周波数帯の変更を試していただければと思います。
(周波数帯の変更はミラプレの設定画面から行えます。本体側面のMODEボタンを複数回押して「設定」に合わせていただいて、設定を行ってください)

「ミラプレ」+ Windows8.1

Microsoftは最新OSバージョンとなるWindows8.1でMiracastに対応をしました。 低価格帯PCやタブレット向けに「Windows8.1 with Bing」がリリースされたことで7~10インチクラスのWindowsタブレットPCへWindows8.1の採用例が増え、ラインナップ的にもホットなカテゴリになると思います。 今回はそんなWindows8タブレットの1つである「ASUS VivoTab 8(M80TA)」を用意し、実際に接続を試しました。

Windows上では「ワイヤレスディスプレイ」という表記で、受け手の検索等を行う機能が実装されています。 チャームから「デバイス」→「表示」と開くことでセカンドスクリーン表記とともに「ワイヤレスディスプレイの追加」が出てきますのでこちらをタップしますと、Miracast受け側の検索が始まります。

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検索でヒットしたデバイスが正しければそのデバイスをタップすると接続確立作業が始まります。
接続確立作業中はミラプレもその旨を表示します。接続が完了すると液晶モニタ側にタブレットの画面が映し出されます。

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再生デバイスのプロパティで出力先を設定することで液晶モニタ側から音の出力が行われるようになります。 Youtubeで動画を再生したりも出来ますが、音がでない時などは再生設定を確認してみてください。

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無線で画面転送をしているわけですのでタブレット本体の表示と液晶モニタへの表示で若干のタイムラグが生じます。ただ、ストップウォッチサイトで実際にその差を見てみましたが、0.2秒程度です。
プレゼンをしたり、動画の再生をテレビなどに映したり、といった用途であれば0.2秒程度の遅れが致命的になることはまずないと思います。

さて、ここまでWindowsタブレットでのMiracastを試しましたが、複製モードではタブレットの縦横回転が効かなくなります。

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こんな具合で、タブレットを縦にしても、画面は横固定になりました。Miracastで横画面出力をしているために画面設定的には横画面で固定している状態の様です。複製ではなく、拡張にすることでその縛りから解放はされますが、マウスを接続していない場合、あるいは液晶モニタ側がタッチ操作に対応していないとちょっとした惨事になるかもしれません。

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拡張表示させることは可能ですが、タブレットのみの操作では液晶モニタに映った部分に対しては何も操作できません・・・。

なお、Windows8.1におけるMiracastですが、OSレベルで対応していても、実際にはハードウェアレベルでの対応も必要となります。主にディスプレイと無線LANのドライバに関するもので

■WDDM(Windows Display Driver Model)1.3以上のディスプレイドライバ
■NDIS(Network Driver Interface Specification)6.3以上の無線LANドライバ

が適用されたものでないとMiracastの動作はおぼつきません。
ドライバーモデルはDirectXの診断ツールにて確認が可能です。また、NDIS6.3以上という無線LANドライバに関してはWindows8以降に正式対応したドライバを用いれば概ね問題ないはずですが、PowerShellのコマンドで確認するのが確実でしょう(昨今安価のタブレット製品が多数発売されていますが、それらの中にはNDIS6.3以下のモジュールを使用している可能性があるかもしれませんので・・・)。
参考までに、今回使用した「VivoTab 8(M80TA)」は元々製品としてMiracast対応を謳っていることもあり、両方共クリアしていました。

Microsoftの最新版OSでの対応ということもあり、ドライバ周りの対応状況の確認は必要であるものの、接続できれば色々と楽しい使い方が出来そうな仕組みです。
最後にタブレット上でYoutube動画を再生している撮ってみましたのでご覧ください。
こんなイメージになります。

「ミラプレ」+ iPhone

今回Miracastの実験にミラプレを選んだ一番の理由はiPhoneとの接続対応を表明していることです。
ただ、お気づきの方も多いかもしれませんが、iPhone、というよりは搭載されたiOSは「AirPlay」という独自の無線映像伝送規格をサポートしており、Miracastをサポートしてはいません。さらに、最新のiOSバージョンとなるiOS8や1つ前のバージョンとなるiOS7では用意されている専用モードでの接続も行えません。
ただし、外部アプリを活用することで写真や動画の転送は可能になっています。
詳しい設定方法はアイ・オー・データのQ&Aページに詳しく掲載されていますのでこちらを参考に設定をお試しください。

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※実際にiPhone6 Plusで試してみました(アプリが警告を発していましたがなんとか動きました)

使い勝手的には転送できるものが限られてしまう(アプリがサポートした写真や動画のみ)ためにAndroidなどと比べると魅力が薄いのですが、Miracast非対応のiPhoneでも転送する手段を確立したミラプレはiPhoneユーザーには貴重な存在ではないかと思います。

まとめ

実際にワイヤレスディスプレイを試してみると、相性などが出やすく、敷居は高めになるかなという印象とはなってしまうのですが、100%ではないものの回避方法もあり、実際に接続を確立して使ってみると、遊び心も備えた面白い技術だなという感じです。
MicrosoftでもMiracastアダプタを開発、発売を予定しているという報もありますので、特にWindows OS麺では今後さらに機能面でも拡大されていくかもしれません。
スマホやタブレットに+αの使い方を加えて、モバイルライフをより便利に、より快適にしていただく一助になるのではないでしょうか。

最後に機器の貸出にご協力いただきましたアイ・オー・データ機器様、テックウインド株式会社様に厚く御礼申し上げます。

執筆:パソコン工房 職人2号